保証に関する変更点
保証とは・・主債務者が債務の支払いをしない場合にこれに代わって支払いをすべき義務のこと
根保証とは・・将来発生する不特定の債務保証
従来からの連帯保証人の流れと課題について、商工ローンの保証問題など背景に、貸金業法や第三者保証の禁止や根保証を含む様々な議論がなされてきました。
今回の改定では第三者保証は公正証書が必要なることや包括根保証の禁止の対象を拡大することなど、保証人保護のさらなる拡充がなされてきます。
今回の法改正では、保証人保護の方策として次のような第三者保証の制限が拡充されました。
変更点
- 公正証書の作成や情報提供義務など保証人の保護のための方策が拡充される
- 個人の根保証契約については、極度額の定めを置くことが求められる
- 連帯保証人に対する履行の請求が主債務者には及ばない
これらにより、今後個人保証にについては減少していくものと考えられます。
保証契約の情報提供義務の新設
- 契約締結時 主債務者から保証人へ
- 履行状況 債権者から保証人へ
- 期限の利益喪失 債権者から保証人へ
契約締結時の情報提供義務(改正法465の10)
主債務者による保証人への財産状況等の情報提供義務の規定を新設
現状では、保証人になるにあたって、主債務者の財産状況等(保証リスク)を十分に把握していない事例が少なくありません。
主債務者は、自らの財政状況等を保証人に説明する義務を負っていませんし、債権者も主債務者の財政状況等を保証人に伝える義務を負っていません。
対象となる保証
- 事業上の債務の保証を個人に対して委託する場合
- 保証人が主債務者の法人代表者であっても情報提供が必要
- 貸金債務の保証とは限らない
提供すべき情報の内容
- 財産及び収支の状況
- 主債務以外の債務の有無やその債務の額と履行状況
- 担保として提供するもの又は提供しようとするものがあるときは、その旨と内容
違反した場合
保証人は、保証契約を取り消しすることができます。
主債務者の履行状況に関する情報提供義務(改正法458の2)
債務の履行状況・・・「債務者が債権の内容を実行すること」
保証人にとって、主債務をキチンと返済されているかなど、履行状況は重大な関心事ですが、今までそのような情報は保証人はあまり知ることができませでした。
債権者としても主債務者の事業の経営状況やプライバシーに関わる情報を提供してよいのか判断が難しく、対応に苦慮することも少なくありません。
債権者は、保証人から請求があったときは、主債務の元本、利息及び違約金等に関する情報を提供しなければなりません。
対象となる保証
請求をすることができるのは、主債務者から委託を受けた保証人に限られます。(法人保証も同様)
- 不履行の有無
- 残額
- 残額のうち、弁済期が到来しているものの額
主債務者が期限の利益を喪失した場合(改正民法458条の3)
保証人の保証負担額は、主債務者が支払いを延滞した後に発生する遅延損害金によって大きく膨らむ。特に住債務者が分割金の支払いを遅延して期限の利益の喪失し、一括支払いを求められるケースに多い。
期限の利益(きげんのりえき)とは、取り決めた期限が来る前に、業者から返済を請求されない権利です。
主債務者が支払いを怠り、特約に基づいて保証人が一括返済の義務を負うことなどをいいます。
主債務者が支払を遅延し、期限の利益を喪失したことを保証人が知っていれば、早期に立て替え払いをして遅延損害金が発生することを防ぐなどの対策をとることも可能。しかし、保証人は、主債務者が支払を遅延したことを当然には知らない。
期限の履歴を喪失したことを保証人に
対象となる場合
保証人が個人の場合
情報提供義務の内容
主債務が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その喪失を知ったときから2か月以内に、その旨を通知しなければならない。
債権者の義務違反の場合
違反は、喪失から通知までの遅延損害金を保証人に請求できない。
個人根保証契約の保証人の責任
極度額の定めを(なければ無効に)
貸金等債務以外の根保証、例えば賃貸借や継続売買契約の根保証についても、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められることがあります。
改正法の内容
- 極度額の定めの義務については、すべての根保証契約に適用
- 保証期間の制限については、現状維持(賃貸借等の根保証には適用せず)
- 特別事情、主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の根保証の打ち切りについてはすべての根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産があっても、賃貸借等の根保証が打ち切りにならない点は現状維持。
公正証書の作成義務と作成の方法(改正法465条の6第1項、3項)
- 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約
- 主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約
その契約の締結に先立ち、その締結の日前から一ヵ月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示してなければ、その効力を生じない。
公証人による保証意思の確認
保証人になろうとする者が、保証しようとしている主債務者の具体的な内容を認識しているか?
保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務の履行をしなければならないことを理解しているか?
保証契約のリスクを十分に理解したうえで保証人のなろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているかどうかを見極める
公正証書作成の方法
- 一定の事項を公証人に口授
- 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること
- 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとするものが署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる
- 公証人が、その証書は1~3に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと
公正証書にかかる費用は1万1000円程度
保証人が法人の場合は適用外
保証人が主債務者の代表者等一定の属性を有する場合は適用外
公正証書の作成義務を怠ると、保証契約は無効となる
保証人の公正証書作成が免除となる場合は?第三者保証に当たらないものは・・・(改正法465の9)
改正法465条の9(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外)
主たる債務者が法人の場合
- 主たる債務者の理事、取締役、執行役員又はこれらに準ずる者
- 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を有する者等
主たる債務者が個人の場合
- 主たる債務者と共同して事業を行う者
- 主たる債務者の事業に現に従事している配偶者
配偶者⇒主債務者が行う事業に現に従事しているとは?
保証契約締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事しているといえることが必要で単に書類上事業に従事されているだけでは足りません。また、保証契約の締結に際して一時的に従事したということも同様です。
公正証書の注意点
- 公正証書に執行認諾文言はつけられない
- 公証人からの意思確認は厳しくなる
- 公正証書をつくれば保証無効はなりにくい
- 取締役であれば、業務に関係なくてもかまわないのか公正証書の作成を避けるために取締役登記したらどうか?(実態として機能しなければ裁判所は否定する可能性が高いかも)
- 個人事業主の共同事業者とは?(単なる後継ぎとかではだめ)
- 配偶者が「現に事業に従事する」とは?(どれくらい?今後、議論の余地があると考えられます)
連帯保証契約に関する請求等の見直し「絶対効、相対効」とは・・(改正法458)
第438条、第439条第一項、第440条及び第441条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
改正法では、これまで「絶対効」①履行の請求、②免除、③時効の完成について原則のとおり「相対効」になります。
連帯保証人に生じた事由
弁済、履行請求、更改、免除、相殺、混同、時効の完成
連帯債務者や連帯保証人に対する請求にによって、行方不明の主債務者等に対する時効中断を行うことができなくなります。
現行法では、連帯保証人に対する履行の請求をすれば、主債務者に対しても時効の中断や履行遅滞の効力が生じる(請求の「絶対効」)。
改正法では、連帯保証人に対する履行の請求をしても、主債務者に対しても時効中断効や履行遅滞の効力が生じない(請求の「相対効」)。