表明保証とはどのようなことですか?
債権を売る会社(売主)と債権を買う会社(買主)が売買の対象となる債権の内容について事実であることを保証することです。
表明保証は「債権を売る」、「債権を買う」前提としてその債権の内容を請求書、契約書、取引履歴などのエビデンス(商取引の証拠となる帳票類)を提出して債権を確定させます。
買い手側の立場になった場合、その債権が架空の債権であったり、実際のものと違っていれば債権を買い取りした後に損害を被ることになります。
つまり、「その債権は実体として存在し、だれにも差押されたり、あなたの債権者としての地位を脅かす様な事象はありません!私が保証します!」といったことが表明保証ということになります。
一般的には、譲渡が成立することを表明し、保証するということです。
約束したことに違反した場合、損害を請求できることは当然ですが、表明保証はアメリカの商取引の実務から発展してきた契約形態であるため、日本での実際の実務では判例によるものがまだ多いのが現状です。
はじめから買い手を騙すことは論外ですが、間違った内容や知らずにに別の会社や金融機関の担保(債権譲渡担保)に入っていたなどは2重譲渡といって表明保証違反になるので気を付けましょう。
一般的な債権の保証とは違う
普通、が買い手にとってのリスクはその買取した債権がデフォルト(債務不履行)した場合、そのリスクをよく調べてからから買い取りします。
その意味ではデフォルト(債務不履行)のリスクは買い手が負うことになります。
したがって債権の債務者(この場合、「取引先」)が倒産しても債務が履行されないからと言って売り手に買い戻しなどの請求ができないということになります。
売主の一般表明保証
売主は、買主のために、債権譲渡を実行する現在時点において以下の事項を表明します。
- 売主は適法に設立された、実際に存在する会社である。
- 売主は契約における署名や文書の交付などの権限を持っている。
- 売主は法的な債務を持つために必要なことを持っている。
- 売主を代表して行うことについて適法に権限を持っている。
- 売主の行為は法令違反にならず、裁判所や政府機関の承認など無くできる。
- 売主は債権譲渡に重大な影響がある訴訟などは無い。
売主の債権に関する事実の表明保証
売主は買主のために債権譲渡の実行時点で次のようなことを表明し保証します。
- 提示した債権に関する資料の内容はすべて真実である。
- 債権が発生した時から現在まで売主と取引先だけに権利がある
- 売主は債権を買主以外の他の者に譲渡したり、担保や質入れをしていない。
- 買主が債権譲渡後の権利を行使するために必要な書類を引き渡している。
- 取引先は破産の申し立て、会社更生法、民事再生、特別清算などの法的倒産手続きをしていない。
- 取引先は反社会的勢力との関係はない。
- 譲渡禁止特約は無い、又は取引先は放棄している。
表明保証の条文例
売主:甲 買主:乙
第〇条(甲及び乙の表明及び保証)
売主及び買主は、本契約日において、以下の事実を表明し、保証する。
-
- 設立根拠法に基づき適法に設立され、有効に存在する法人であり、かつ自己の財産を所有し、本契約を締結し、本契約に基づき義務を履行する能力を有すること。
- 本契約の締結及び履行は、自己の目的の範囲内の行為であり、本契約を締結しこれを履行することにつき、法令上及び自己の内部規則上必要とされる一切の手続を経ていること。
- 本契約は、その締結により、適法で有効かつ拘束力があり、倒産法その他債務者の権利を一般的に制限する法令による場合を除き、本契約に従い強制執行可能な債務を構成すること。
- 本契約につき自己を代表して署名又は押印する者が、当該署名又は押印について適法に授権されていること。
- 本契約の締結及び本契約の義務の履行が、自己に対して適用される法令に違反せず、また自己が当事者であり、又は自己若しくはその財産が拘束される契約、その他の合意に違反せず、また自己若しくはその財産に対して適用される法令、規則、通達、判決、決定、若しくは命令に違反しないこと。
- 本契約の締結及び履行に重大な影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある自らに対する判決、決定、若しくは命令はなく、また、自己の業務又は本契約に基づく義務の履行に重大な悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるいかなる司法上若しくは行政上の手続も継続しておらず、また自己の知る限りそのおそれもないこと。
- 破産、民事再生、会社更生、特別清算その他これに類する法的倒産手続が申し立てられておらず(申立人を問わない。)、あるいは支払停止の状態になく、また自己の知る限りそのおそれもないこと。
第〇条(甲の表明保証及び保証)
甲は、買取日において、譲渡債権について、以下の事実を表明し、保証する
-
- 本契約第〇条に規定する譲渡債権残高の各上限金額の制限に違反しないこと。
- 譲渡債権の内容が債権譲渡申込書の記載内容と相違しないこと。
- 第三債務者の甲に対する債務の弁済の充当について、第三債務者及び甲のいずれも意思表示をしていないこと。
- 譲渡債権について、仮差押、保全差押、又は強制執行の申立てが行われていないこと。
- 譲渡債権は、自己に有効に帰属する債権であり、第三者のために担保権その他の権利により制約されていないこと。
- 譲渡債権の譲渡に関して、自己の債権者その他一切の第三者を害する意図を有しないこと。
- 譲渡債権に関し拘束力がある譲渡制限が課されていないこと。
- 譲渡債権の成立、存続及び行使を妨げる理由が存在せず、また自己の知る限りそのおそれもないこと。
売主の表明保証の違反があれば買主に補償しなければならない
売主は表明保証に関して違反してしまえば買主にその損害や損失の費用を補償しなければなりません。
債権譲渡する場合の契約は、債権の内容を売主がかなり厳格に表明保証することを織り込まれている契約内容になっていることが一般的です。
買主(ファクタリング会社)は売掛債権を譲渡(買い取ってもらうこと)売主が示す、債権の内容や取引先との権利関係を取引契約書や取引実績など資料を調べたうえで、その債権譲渡がきちんと回収できるか調べます。
買主が調べた又は売主が示した債権(売掛金)の内容が事実と違い、回収できなないような損害が出れば売主にその損害を補償請求します。
このように債権譲渡契約書の内容に織り込まれる「表明保証」の内容を十分に確認して契約をすることが求められますが、悪意をもって買主を騙すようなことがなければ通常、損害賠償を請求されることはありません。
買主(ファクタリング会社)の中には悪質な業者もありますので、契約の中に必要以上の保証を求めるものありますので、契約内容は前もって見せてもらうようにして確認することをお勧めします。