「融資」と「ファクタリング」はどうように違うのしょうか。
最近、ファクタリングと融資を混同している方が多くいます。
どうように売掛債権を活用した資金調達に変わりはありませんが、融資である貸付に対して、債権の買取であるファクタリングは根本的に違ってきます。
融資とファクタリングの比較
融資は貸付である
ファクタリングは債権の買い取り
融資の場合
売掛金を担保にする貸付=売掛債権担保融資
売掛債権担保融資とは銀行やノンバンク(貸金業登録業者)等の金融機関が行うABL※等の譲渡担保といわれる融資方法です。
特徴
・融資であることから、返済義務がある
・あくまでも担保なので融資の返済が通常に行われている場合は売掛金は取り立てされない
・利息制限法上の上限金利がある(100万以上の貸付であれば年率15%まで)
・複数の売掛先を担保に入れる「集合債権担保」と呼ばれる方法が多い
・手数料は金利になるので上限がありファクタリングと比べると比較的安い
※ABL(Asset Based Lending)は、企業のの資産(在庫、設備、機械などの動産や売掛債権)を担保として活用する融資手法です。
ファクタリングの場合
「ファクタリング」は売掛債権を買い取り=債権譲渡
ファクタリングとは、商取取引で発生する売掛債権を買い取りする売掛債権などを買取することです。
特徴
・返済義務がない
・銀行やノンバンク(貸金業登録業者)でなくても、ファクタリング業者といわれる会社が行っている
・担保ではなく買取であること
・売掛先が倒産しても、債権を買い戻さなくてもよい(銀行に遡求権がない)
・手数料が融資と比べると高いことが多い
売掛債権担保融資(ABL)とは
銀行や貸金業者は融資を行うとき大抵は担保が必要になります。
企業や経営者が所有する不動産や設備など担保にしますが、すでに担保設定していたり、担保の評価が足りないときは融資を受けられません。
また、そのような資産を持たない企業も多いなか、有効な担保として売掛債権を担保に調達する方法が「売掛債権担保融資」です。
担保の場合は、融資の返済ができなくなった時などに初めて売掛債権を「第三債務者」といわれる売掛金の支払者から取り立てを行います。
そもそも担保ですので融資の返済が通常に行わなわれていれば、「第三債務者」に銀行が取り立てを行うことはありません。
「売掛債権担保融資」は、あまり活用されていないのが実情で、金融庁でも近年ではABL「動産や売掛金の担保融資」を積極的に推進しており、中小企業の資金繰り改善や経営改善、新規事業に挑戦するため、金融機関の体制を整備が行われており、事業の成長の為に売掛債権の活用が期待されます。
ファクタリングとの比較
■売掛先が倒産した場合
融資
あくまで売掛金は担保なので、借り入れた資金は当然返済義務があります。
複数の売掛先を担保にしていない場合は、別の担保を要求される可能性は残ります。
ファクタリング
これがファクタリングの大きな特徴で、売掛先が倒産しても買い戻しなどの支払い義務が生じません。
「真正譲渡」と言われ、買取した者が、倒産リスクを負うことになります。
■金利
融資
銀行融資かノンバンクで大きく違いますが、数パーセントから15%以内(100万円以上)で利息制限法上の金利になります。
年率計算なのでファクタリングと比較すると割安になります。
具体例
100万円を1ヵ月借入した場合
金利:年率10%
1,000,000円×10%×30日÷365
=8,219円
別途、事務手数料、印紙、登記費用、保証料がかかる場合があります。
ファクタリング
3者間ファクタリングの場合:売掛金の2%から10%までが相場
2者間ファクタリングの場合:売掛金の5%から20%までが相場
具体例
100万円の売掛金をファクタリングした場合
売掛金:1,000,000円 期間1ヵ月
買取手数料(率/月):5%
買取料:50,000円
差し引き金額 950,000円
※別途、事務手数料や保証金等を差し引かれる場合もあります。
■資金化されるまでのスピードについて
融資
銀行融資の場合、2週間から1ヵ月ぐらい時間がかかる
ファクタリング
スピード重視の業者が多いの1日から1週間ほどで資金化が可能
■審査
融資
融資では借入しようとする企業自身の審査があり、売掛債権担保融資は決算書や試算表、取引先一覧表などを提出し、貸し手が審査を行います。
ファクタリング
ファクタリングの審査では主に売掛先企業の審査になりますが、実際に売掛金が発生しているか、取引の実績や取引内容の確認を重視して審査されます。
銀行借入のリスケジュール、赤字決算、債務超過でも可能。
■契約内容
融資
金銭消費貸借契約。いわゆる借用証書を用いての契約となります。
融資なので、会計上は負債となり、契約条件によって長期借入金か短期借入金に計上します。
確定した債権及び将来発生する債権も担保にできます。
ファクタリング
一般的には債権譲渡契約書。3者間の場合は債権譲渡承諾書が用いられます。
確定した債権が基本となります。(請求書発行したもの)
■売掛先への通知
融資
一般的には「債権譲渡登記」といわれる方法で、譲渡担保の対抗要件を要します。
返済が滞ったり、借り手が倒産したような時に売掛先に通知されます。
ファクタリング
3者間ファクタリングの場合は「債権譲渡承諾書」というもので、売掛先企業に譲渡を債権譲渡することを承認してもらいます。結果的に通知を行ったこと同様になります。
2者間ファクタリングの場合は、売掛先への通知や承諾を行わあないのが特徴です。
売掛金の入金は
まとめ どちらを選ぶべきか
融資に比べファクタリングは借入ではなく債権の売買なので企業自身の業績はあまり審査で影響されませんので、比較的資金調達は簡単にできます。その代わり、買取手数料は融資にと比較すると圧倒的にファクタリングの方が割高になります。
機動的に資金調達したいときなどは有効かもしれませんが、長期的に見た場合に手数料の負担を考えるとできるだけ、金融機関から借り入れしたほうが良いと考えれます。
基本的には融資が難しい場合にファクタリングを検討するといったケースが多いですが、ファクタリングでの資金調達もメリットもあるので、短期資金の調達であれば選択することも良いでしょう。
売掛金を活用して資金調達するという形は融資もファクタリングも同じですが、その内容は全くの別のものとなります。
それぞれに特徴があり、方法、手数料、契約内容などもあり、条件面で比較することも重要ですが、どちらも信用のおける相手と取引することは最も重要となります。