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消費貸借契約の成立要件の見直し

消費貸借契約について 金融法務(民法改正)

契約は「諾成契約」「要物契約」の2つに分類できます。

諾成契約とは、当事者の合意のみで契約の効力が生じること。

要物契約とは、当事者の合意の他に契約が成立するには、目的物の引き渡しが必要であるという契約のこと。

民法に規定された契約のうち、消費貸借、使用貸借、寄託契約のみが要物契約とされており、それ以外は全て諾成契約です。

消費貸借とは借主が貸主から金銭やその他の代替物を受け取り、それらを一旦消費して、同種、同等、同量の物を返還することを約束することによって成立する契約です。

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消費貸借契約に関する変更点

  • 消費貸借などの要物契約、書面(電子的記録を含む)による諾成的消費貸借を認めることになります。
  • 貸主についても、書面による諾成的消費貸借契約については、貸付を行う義務が発生します。
  • 目的物の交付を受けとる前に借主からの解除について、貸主は損害賠償を請求できるようになります。
  • 返還時期を定めた場合、借主は期限前弁済ができますが、貸主に損害が生じた場合には、貸主が借主に対して損害賠償請求権をできます。
  • 改正法施行前に消費貸借が締結された場合には、現行法の規定が適用されます。
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書面でする消費貸借契約は、諾成契約に(新設)

消費貸借

現587条では、消費貸借、使用貸借、寄託の契約が要物契約として規定されていました。

改正前の現状
〇当事者の合意のみによる契約成立(諾成契約)を基本原則としている
〇要物性を厳格に適用すると不都合な場合がある
〇判例は、これらの要物契約の成立について要物性を緩和して解釈している。
〇判例により、合意のみの消費貸借の成立も認められるなど諾成か要物があいまい

例えば、住宅ローンを利用して自宅を購入する場合など

民法改正によって、消費貸借、使用貸借、寄託の契約は諾成契約に改められ、現在は、消費貸借契約のうち書面によらないもののみが要物契約とされている。

改定のポイント

書面(電子的記録債権を含む)による消費貸借契約は、諾成契約に!

  • 書面でする諾成的消費貸借契約を認める
  • 貸主の貸す債務が認められる
  • 電子的記録による方法も認める
  • 借主は貸主から金銭等を受け取るまでには契約を解除することができる

民法587条(消費貸借)

消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

原則:要物契約

  1. 借主が借主から金銭等を受け取ること
  2. 借主が貸主から受け取った物と同じ物をもって返還することを約すること

第587条の2(書面でする消費貸借等)【新設】

1 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の
決定を受けたときは、その効力を失う。

4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされ
たものとみなして、前三項の規定を適用する。

例外:【諾成的消費貸借】

  1. 書面でする消費貸借であること
  2. 貸主が借主に金銭等を引き渡すことを約すること
  3. 借主が貸主から受け取った物と同じ物をもって返還することを約すること

諾成的消費貸借の引き渡し前のルール

改正 第587条の2-2【新設】

書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

  • 借主は契約を解除できる。
  • 貸主は解除によって受けた損害の賠償を請求することができる。

改正 第587条の2-3【新設】

書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。

  • 貸主は貸付前に「貸す債務」を負う。
  • 当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは効力を失う。
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貸主における諾成的消費貸借契約における契約書

貸主は、貸す義務が発生しないようにするための工夫することが考えられる

例:本契約の成立にかかわらず、甲(貸主)の貸す債務は、乙(借主)に対する金銭の交付時に発生するものとする

※金銭の引渡時を効力発生時期とする旨を明確にする

貸主は、借入れ予定日から1ヵ月を経過しても、借主から貸付実行の請求がない場合には、金融機関から借主に通知することにより、この契約を解除することができます。

(借主に生じた損害については貸主の責めに帰すべき事情により借主が貸付実行することができなかった場合を除いて、貸主は賠償する責めを負いません。)

※貸主の「貸す債務」から解放するための規定

借主からの金銭貸付前の解除に関する規定

例:乙(借主)は、甲(貸主)から貸付金を受領する前に限り、本契約を解除することができる。この場合、乙は甲に対して違約金として金〇円を支払うものとする。

借入金を早期に返済する場合など、返還時期に関する規定

現行法では、第136条2項(期限の利益の放棄における相手方の利益を損害することの禁止)が適用され、借主は期限前弁済をすることができるが、貸主に生じた損害の賠償をしなければならないとされていた。

改正前
第591条(返還の時期)
1 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、いつでも返還をすることができる。

改正後

第591条(返還の時期)
1 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

返還時期を定めた消費貸借の場合、期限前返済をしたことで、貸主に損害が生じた場合には、貸主が借主に対して損害賠償請求を有することが明確化されました。

貸主の繰り上げ返済の規定

借入金の早期返済の違約金が固定金額の場合

例:乙(借主)は、本貸付金の期限前弁済をすることができる。この場合乙(借主)は甲(貸主)に対して、違約金として金〇円を支払うものとする。

借入金の早期返済の違約金を残存元本の割合に応じて支払う場合

例:乙(借主)は、本貸付金の期限前弁済をすることができる。この場合、乙(借主)は甲(貸主)に対して、違約金として残存元本の〇%に相当する金額を支払うものとする。

上記では、住宅ローンの繰り上げ返済の場合、違約金が残存元本に応じて変動すると、事務費用として合理性はなく、相手方が消費者である場合には、消費者契約法の不当条項に該当するおそれがあり、問題になる可能性があります。

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