事業譲渡の全部または一部を他の会社へ譲渡

M&Aと事業承継

事業譲渡は、事業の全部または一部を譲渡することを言います。

売り手企業(譲渡会社)のメリットは、対象の会社の事業・資産・負債のうち、特定の部分を譲渡の対象にできることです。

譲渡会社:事業を売る企業

「事業」とは一定の目的のために組織的に結合された財産を指し、人材、不動産、動産、債権、特許権、ノウハウ、取引先との関係を含む包括的な概念とされています。

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対価は、会社に対して支払われる

株式譲渡と比べた場合、人や物の流れは事業譲渡と基本的に同じといえます。

・株式譲渡の場合、対価が株主であるオーナー社長に支払われる
・事業譲渡の場合、譲渡会社である法人に支払われる

(譲渡の対価として金銭が支払われることが多いですが、株式、債券、その他の財産でも構いません)

オーナー社長がすべての対価を受け取りたい場合、売り手企業(譲渡会社である自社)から退職金や配当金、毎年の役員報酬という形で受け取ることになります。

その場合、累進課税を考えれば、1年ですべての対価を個人に移転するのは退職金や役員報酬をうまく組み合わせても、一般的にには所得税、住民税などの税率が高くなります。

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譲渡会社のメリット・デメリット

メリット

  • 対象会社の事業・資産・負債のうち、特定の一部のみを譲渡の対象にできる。
  • 譲渡会社には債権者保護手続きがない。

合併等の組織再編行為には、原則として債権者保護手続きがありますが、事業譲渡では債務者(譲渡会社)の変更がないことからありません。

事業譲渡に債権者保護手続きがないは、事業譲渡が本質的に取引行為であり、譲渡会社に事業譲渡の対価が入るので、会社の責任財産に変動はないといった点にあります。

債権者としては事業が安く譲渡された場合には、会社の責任財産が減少し、債権者の立場が悪化することになります。これは事業譲渡に限らす重要な財産が安く譲渡された場合も同じで、債権者としては期限の利益の喪失事項にしたりするなど自衛が必要となっています。

デメリット

  • 株式譲渡と比較すると個人株主の株式譲渡の利益の課税率は非公開会社で20%ですが、事業譲渡の利益の法人課税は税率が約35%です。最終的な手取りの金額が少なくなることがある。
  • 譲渡の手続きが煩雑でること。

また、注意点として事業の譲渡後に「競業避止義務」を負うことになります。

会社法 第二十一条(譲渡会社の競業の禁止)
事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
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売り手企業(譲受会社)のメリット・デメリット

メリット

  • 特定の事業のみを譲受の対象にできること。
  • 対象となる事業を特定できるため、売り手企業(譲渡会社)の偶発的な債務を負う可能性が低いこと。
偶発的債務 (現実にはまだ発生していないが、偶発的に発生し、その負債額を正確に予測できない債務)
買い手がリスクを遮断したいといった理由から株式譲渡後の簿外債務の可能性を恐れ事業譲渡を選ぶこともあります。

取引上「のれん」が認められる場合は、適正な金額であれば税務上の償却が認められます。

  • デメリット買い手と同様に移転手続きが煩雑であること
  • 各種の登録免許税、不動産取得税の負担が生じる
  • 許認可の継続が図れない
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事業譲渡の手続き、簡易な事業譲渡もある

売り手企業(譲渡会社)

  • 事業の全部または重要な一部の譲渡を行うには株主総会の特別決議が必要です。
  • 譲渡会社は、譲渡する資産の帳簿価額が譲渡会社の総額の20%以下の場合、株主総会の議決は不要です。

買い手企業(譲受会社)

  • 事業の譲受会社において、それが重要な財産の場合は、取締役の決議が必要となり、譲る受ける事業が他の会社(譲渡会社など)の全部の場合には株主総会の特別議決が必要です。
  • 対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が譲受会社の純資産額の20%以下の場合には、株主総会の議決は不要です。だたし、事業譲受けに反対する株主の行使できる株主数が議決権総額の6分の1を超える場合を除きます。
  • 事業譲渡等を行う会社との間に支配権がる場合にも、株主総会の議決は不要です。
「重要な一部」について
会社法では、総会承認を要しない事業譲渡について、取締役会限りで行うことができる合併、分割、株式交換、株式移転などの簡易組織再編の基準と整合性をとることにより、事業の重要な一部の譲渡であっても株主総会の承認を必要としない場合を、譲渡される資産の帳簿価格が総資産額の5分の1以下という形で明確化されました。
これは、重要な一部であったとしても、株主総会の承認が不要と定めたもので、事業の重要な一部が何かを定めているものではありませんが、実務的には5分の1を超える場合には、株主総会の承認を求めることになっていくと思われます。
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オーナー社長が、事業譲渡を選ぶケース

  • 副業の事業部門を売ることで、その対価を本業の運営に資金にする
  • 買い手の企業が事業全体の株式譲渡に難色を示したものの、特定の事業部門については興味を示し、その事業のみを譲渡する

事業承継のM&Aの場合、一般的に売り手であるオーナー社長としては株式譲渡の方が有利でですが、買い手がどうしても事業譲渡を求める場合は、その事業の需要関係、どちらが売買を強く求めているかなどで決まってきます。

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